2014年06月17日
マラソンに取り組む市民ランナーの安全10か条
日本体力医学会ガイドライン検討委員会と公益財団法人日本陸上競技連盟医事委員会が共同で「マラソンに取り組む市民ランナーの安全10か条」を策定しています。
ランナー自身が自己責任のもとに、どのような健康管理をおこなうのか、どのようにトレーニングをおこなうのか、レース当日にどのように注意すべきか、について『安全10か条』としてまとめられたものです。
大会に参加される前に、ぜひご覧ください。
平成25年5月10日
日本体力医学会ガイドライン検討委員会
公益財団法人日本陸上競技連盟医事委員会
■ 健康管理について ■
1.普段から十分な栄養と睡眠をとりましょう。
トレーニングで消費されるエネルギーに相当する栄養摂取と疲労回復のための十分な睡眠は欠かせません。特に、炭水化物によって摂取エネルギー量を増やし、たんぱく質を十分に摂取することが必要です。疲労が蓄積するとけがをしやすくなります。疲労回復を考えたトレーニング計画をたてましょう。
大会が冬季の場合にはインフルエンザに注意が必要です。インフルエンザにかかれば大会中に他の人にうつす可能性もあり、治るまで参加はできません。秋には早めにインフルエンザワクチンを受けましょう。
2. 喫煙習慣をやめましょう 。
喫煙は、心疾患の危険因子であり、心臓事故発生の危険性を高めます。また、有酸素運動能力低下の原因になります。レース会場などで喫煙することは、周りのランナーに大変な迷惑にもなります。折角の屋外の気持ち良さが台無しになります。レース参加を機会に喫煙習慣をやめましょう。
3.メディカルチェックを毎年受けましょう。
レース参加やトレーニングは自己責任です。1年に1度は心電図検査を含めたメディカルチェックは必須です。何らかの異常を指摘された場合には、かかりつけ医や循環器内科医師に相談しましょう。
4.生活習慣病がある方は、かかりつけ医とよく相談しましょう。
心臓病、高血圧、糖尿病、脂質異常症、メタボリック症候群などの生活習慣病は運動習慣で改善がみられます。一方で、生活習慣病は動脈硬化をもたらし、レース中の心負荷の増大により、心臓事故につながることがあります。これらの生活習慣病がある方は、参加が可能な状態かどうかを主治医に相談することが大事です。
かかりつけ医とは、皆さんの健康や体調を管理してくれる身近なドクターです。 かかりつけ医をきちんと決めて、各種の検査やレース参加などについて相談しましょう。
■ レース完走に向けたトレーニング計画 ■
5.計画的なトレーニング をしましょう。
マラソンは42.195キロ、あなどってはいけません。マラソン大会の時間制限は7時間以内であることが多いので、マラソン完走のための1つの目安は、まずハーフマラソンや20kmが完走できることです。ハーフマラソンや20kmの距離でゆとりをもって完走できることを目指して計画的なトレー二ングをおこなう必要があります。
また、走るだけがトレーニングではありません。ウォーミングアップとクーリングダウンをしっかりおこないましょう。マラソンを完走するイメージトレーニングを繰り返し、ペースを乱さない、むやみに走らないセルフコントロールを習得しましょう。
練習中にも事故は起りえます。練習も2人以上でおこなうのが望ましいでしょう。レース距離が5~10kmの短い距離では、スピードが速く、その分リスクが高くなり、距離が短いからといって油断してはいけません。
6. 気温、湿度に適したウエアの着用と、適切な水分補給をしましょう。
気温、湿度に適したウエアでトレーニングをおこなうことは、熱中症や低体温症の予防になります。普段の準備は本番での対策につながります。熱中症予防の観点だけでなく、完走のためにも水分補給は重要です。暑くても寒くてものどの渇きを感じる前に塩分を含むドリンク補給をしましょう。トレーニング中から水分補給の練習をしておくことも大事です。
7. 胸部不快感、胸痛、冷や汗、フラツキなどがあれば、すぐに走るのを中断しましょう。
トレーニング中に今まで感じたことがない、胸部不快感、胸痛、冷や汗、フラツキを感じた場合は、心肺停止事故の前触れである可能性もあります。走ることをただちに中止し、できるだけ早くかかりつけ医や循環器内科医に相談しましょう。
8.足、膝、腰などに痛みがあれば、早めに対応しましょう。
レースの走路面はアスファルトです。固い走路でのランニングは足、膝、腰の障害の原因になります。自分の走力にあった適切なシューズをはくことが障害の予防に大事です。また、歩道から車道への段差も転倒の原因になりますので注意しましょう。
足、膝、腰などに痛みがある場合には、まず十分に休むことです。それでも、治らない場合は早めに対応しましょう。
トレーニング中に交通事故に注意するのは当然のことです。特に、夜間は体に反射材をつけるなど身の安全を図りましょう。
■ 大会参加に向けての心構え ■
9.完走する見通しや体調に不安があれば、やめる勇気を持ちましょう。
その日の体調が悪い場合や完走する見通しに不安がある場合は、やめる勇気をもちましょう。意外かもしれませんが、心肺停止事故はレース参加のリピーターに多くみられます。初めてでないから大丈夫という過信は禁物です。
安全にレースをはこぶために、レース当日の体調をスタート前にチェックしましょう。
10.心肺蘇生法を身につけましょう。
レース中やトレーニング中に、心肺停止事故が起り得ます。心肺停止事故を目撃したら、あなたがまわりの方へAEDを持ってくるように大きく叫び、救急車を依頼してください。AEDが到着するまでの間は胸骨圧迫を行ってください。ランナー同士の互助精神も大事です。心肺蘇生法(AEDの使い方を含む)は誰もが簡単に学べる技法です。1人1人が習っておきましょう。